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Q.1 油絵具の原料は何を混合して作るのですか?色によって違うのでしょうか?

A 顔料と呼ばれる色の粉と、空気に触れて乾き固まる性質の油(乾性油といいます。リンシード油やポピー油などです。)をよく練り合わせたものが、油絵具の基本型です。他に乾燥やタッチ等を改良するため補助剤を加えたりもします。顔料は大変な大所帯な物質群であり、その性質もまちまちです。従って絵具も色ごとに性質に違いが出るので、作る方も一筋縄ではいきません。


Q.2 色によって乾燥するのに早い遅いがあるのはどうしてでしょうか?

A 顔料中には、油の乾燥を早める性質のものや、遅らせるものがあり、色ごとに乾く速度の差が出てきます。メーカーでは、乾きの遅いものに乾燥剤を加えるなど工夫をしていますが、ただ単に乾燥を早めるだけでは他の面での弊害があるので、微妙なコントロールをしています。
しかし、乾きの遅いものを、わざわざ乾きにくくするような処理をする事はありません。市販の調合済みの溶き油には、多くの場合乾燥剤が添付されていますから、生の絵具を単独で塗ったときには、乾燥が遅く感じることがあります。特にナイフで塗った場合には、塗面が平滑になって筆塗りに比べて絵具と空気の接触する面積が小さくなり、乾燥が遅くなることがあります。

Q.3 冬季には、油絵具の乾燥が特に遅くなるようですが、どうしてでしょうか?早める方法などはないでしょうか?外に干すとか・・・・・。

A 絵具の乾燥システムは、油(乾性油)が空気に触れて乾き固まると先に申しましたが、この反応は温度が高まると活発になる科学反応です。暖めれば当然乾きは早くなる原理ですが、無理はいけません。乾燥の早い溶き油やシッカチーフを用いる等の工夫が有効ですが、使いすぎはトラブルのもとです。熱風や天日干しなどの荒療治は、控えるべきです。太陽エネルギーは大変強力ですし、外気には絵にとって様々な害毒が含まれています。油絵は洗濯物ではありません。

Q.4 下記の種類の絵具をそれぞれ使ってみたり、色見本を自分で作ってみたりして比較したのですが、ほとんど区別がつきませんでした。どこがどう違うのでしょうか?

―作用絵具と専門家用絵具。

▲劵紂次HUE)と表示されている絵具と表示されていないもの。

カドミウム系、クローム系、パーマネント系の違い。

A 次の質問も同じような内容が含まれているので、まとめてお答えします。

Q.5 ホワイトの絵具にジンク、シルバー、チタニウムなどがありますが、その違いや使い分けの方法を教えて下さい。

A よくこのような質問をされますが、これらの色の生の色を見ただけでは殆ど区別がつきません。しかし、視点を変えて絵具の「色」だけではなく「性質」にまで目を向けてみると、それぞれの違いがわかってきます。生の色を見ただけでは同じように見えたものでも、混ぜたときにその色のニュアンス、濃さ(着色力)、下色を覆い隠す力(隠ぺい力)が違って、それぞれに異なる個性を持っています。

同名色の習作用の絵具と専門家用の絵具とで比較してみましょう。たっぷりの溶き油を使って、二種の絵具をおつゆ状に薄くのばして塗ってみてください。専門家の絵具に比べて習作用の絵具は、発色の面において弱く感じるはずです。これは習作用の絵具が増量のため添加剤を比較的多く含んでいるためです。一方で、多量の添加剤の配合は、画面の耐久性にも問題をもたらすことがあるので、習作用の絵具は文字通り習作用として使用するのが懸命でしょう。

ヒュー(HUE)と表示してあるものは、もととなる絵具が高価だとか毒性が強いなどの理由で、他の顔料で代用したもので、必ずしももとの絵具に劣るものではありません。逆に、もとの絵具よりも優れた性質を有したものの例もあります。コバルトブルーよりもコバルトブルーヒュー(HUE)の方が好きだという絵描きさんも少なからずいらっしゃいます。「ヒュー(HUE)」に限らず「ネオ」「ノーバー」「シュード」「イミテーション」といった名で呼ばれていますが、この後書きのために、損な身分にあまんじています。色こそ似ていても出立や性質やそれぞれの特徴は異なり、再考の価値があると思います。

同じような色でも、カドミウムやクローム、パーマネントといったような種類があります。一時、クローム系は、カドミウム系に比べて耐久性に劣るといった事情があり、それぞれに対してパーマネント(不変の)という名でいくつかの顔料の混合で信頼すべき絵具のジャンルを作る試みが成されました。(従って、パーマネントといっても、全てのメーカーが同じような配合で作っているわけではありません。)当時はカドミウム系も安定した品質のレベルに至っていなかったのですが、その後、カドミウムもクロームもその製造技術が格段に進歩し、大変に安定した製品を提供できるようになったのです。それどころか、パーマネント系の欠点(1.注)をしのぐ面もあるといった具合です。しかし、使用してみないと、その性質は判りにくいもので、実際にお試しになることをおすすめします。

(1.注)パーマネント系の絵具は、クロームイエローやクロームグリーンに似せて作られたため、数種の異なる顔料を混合しています。このため混合の色の際には、濁りやすいきらいがあり、低価格におさえたため、使用顔料もハンザイエローやジアリールイエロー等、安価だが耐溶剤性、耐光性にやや不満が残るものが用いられています。

◎ホワイトには大ざっぱに分けて、3種類あります。これらについて説明するとなるとゆうに2時間は必要になるので、ここでは簡単に述べさせて頂きます。

.轡襯弌璽曠錺ぅ

・使いこなせるようにしてください。

・油絵具の基本です。

▲献鵐ホワイト

・仕上げの塗りにのみ使うように心がけて下さい。

・このホワイトの層はもろく表面がツルツルして。絵具をはじくきらいがあります。

チタニウムホワイト

・厚く塗らないこと。

・混色でやや色がぼける傾向がありますが、遠景にウルトラマリンとの混合を用いれば効果的かもしれません。

※同じ名称のホワイトでもメーカーにより違った性質を持っている事があります。

◎ブラックにも多種の銘柄があります。

.▲ぅ椒蝓璽屮薀奪

動物の骨を蒸し焼きにした炭です。かつては象牙より得られたので、この名が残っていますが、現在ではご存じの通り象牙はおいそれと手に入らないので、他の動物の骨で作ります。深みのある黒色でホワイトとの混色で暖かみのある灰色を作るのが特徴です。

▲薀鵐廛屮薀奪

油煙です。製造条件により、多種のグレードが出来ます。表面で光を一部反射してアイボリーほどの黒さは得られませんが、粒子が大変細かく、着色力も大変に大きいものです。

ピーチブラック

本来植物炭の黒の意味ですが、現在ではイミテーションがはばをきかせています。これは原料の入手難という事情によります。ホワイト、特にシルバーホワイトの混色によって青みがかかった独特の冷たい灰色を得ます。

何社かの外国のメーカーでは、本物のピーチブラック(別名パインブラック)を扱っていますので、試してみてはいかがでしょうか。これらのブラックは共通して乾きが遅く、下描きに単独で厚塗りなどは避けてください。又、ヒビ割れしやすい絵具の代表格です。

ぅ泪襯好屮薀奪

速乾性

ゥ泪鵐ニーズ(ミネラル)ブラック

速乾性

Ε▲鵐螢鵐屮薀奪

耐光性にやや乏しい

Д船織鵐屮薀奪

高価

Q.6 同じ色名でも、メーカーによって色味が違うのはなぜでしょうか?

製法の違いでもあるのでしょうか?

A 同じ組成同じ製法で作っても、ほんのわずかな製造条件によって、各顔料メーカーの色味に多少の違いがあります。しかしコバルトブルーがセルリアンブルーになることはありません。あくまでもコバルトブルーのバリエーションの範囲以内にとどまります。絵具メーカーでは、そうした各社の顔料から選び抜いたものを絵具として製造し、他とは違った色合いを売り出したいという、メーカーとしてのプライド、色に対しての各社の解釈判断の相違などにより、同一名でメーカーによって違ったニュアンスが生じてしまいます。

Q.7 百数十色の中で混色しても出来ない原色(基本色)とは、どんな色ですか?

A 中学校位の美術の教程では、色の混合と光の混合のシステムを習ったと思います。色の混合の基本色は、赤、青、黄ですが、印刷の技術ではこれを赤ーマゼンタ、青ーシアン、黄ーイエローとして、原色印刷の基本にしています。原理的にはこの3色で出せるはずの黒が出ないので、別にスミを用いています。これは色の混合だけではなく実際は、光の混合も生じているという現実があるからです。こうした実状をみますと、はたして原色といえる色を持っていても、それで全ての色が出せるかという事になると疑問です。

Q.8 絵具は2色か3色の混合だけで、4色以上の混合はしないほうが良いと言いますが何故でしょうか?

A いろいろな色を混ぜていくとグレーの要素が強くなって彩度が低下していくからですが、これはあくまで警句としてとらえてください。うまくいけば5〜6色の混合をしても良い色を出すことは可能です。例えば、肌色などは2〜3色で決まるとは考えにくく、要は各々の色の性質と出したい色をしっかりみきわめる事だと思います。

Q.9 絵具の製造過程で何色も混合してある中間色は、混ぜて使わない方が良いのですか?

A 中間色でもう少し青みが欲しい、赤みが欲しいというようなケースがあると思いますが、手を加え過ぎるようであれば初めから中間色を独自に作った方が良いと思います。

Q.10 混合すると変色するという絵具がどんな本にも書いてありますが、混合をなるべく避けた方が良いという色はどの色とどの色ですか?

又、変色するのにはどの位の期間で変色していくのですか?

A 絵具のチューブのラベルとか、カタログを見ますと、N、S、P,Xなどの記号で、「混色すると変色する恐れあり」との記載があります。その多くは、かつての変色のトラベルをもとに科学的な推察で変色物質が生成される可能性を指摘したものです。しかし、実際にはそうした理屈通りに事が進まないのが現実です。

同じような物質で出来ている絵具でも、製造条件いかんで変色する確率は大になったり、殆んど無になったりします。現在の顔料製造技術は大変に進んでいるので、絵具どおしの混合で変色するようなことは殆んど心配はないといって良いでしょう(全く無いとは言えない)。

このような事からメーカーとしての混色の際のトラベルの表示は、なるべく避けよとの意味で、神経質になる必要はないが、油断しては危険といったような注告にとどまるものになっています。

変色が実際に現れる場合には、絵が描かれた時の条件やその後の保存状態いかんで大変に差がありますが、単一の条件や物質に現れる場合は、絵が描かれた時の条件やその後の保存状態いかんで大変に差がありますが、単一の条件や物質どうしの科学反応のみによって起こる事はまれです。実に難しい問題です。

◎変色トラベルに対応する最低限のマナーを記しておきましょう。

^譴聴譴弔粒╋颪寮質を把握する。

▲肇薀戰詆充┻号(N,P,S)

出来上がった絵にはニスを引く。

こ┐諒歛犬砲蝋皺溝深勝外気等の悪条件のもとに置かない。

※上記は、あくまでも最低条件です。

Q.11 日光に弱く、退色しやすい絵具とはどのような色ですか?

A ローズマダー、ピンクマダー、イタリアンピンク、オリーブグリーンなどです。カタログを見ますと、これらの顔料には、〜レーキというものが使用されています。一般にはレーキ類は、耐光性に欠けます。しかし、レーキと名記してある全てのものが光に弱いわけではなく、クリムソンレーキなどは、かなりの耐光性を有しています。(クリムソンレーキは実際にはレーキではありません。レーキとは溶けやすい染料を金属分子と結合させて溶けにくい物質に変えたものをいいます。)耐光性の弱い絵具は、ホワイトに混ぜるとますます光に弱くなります。退色性とは異なりますが、バーミリオンは強い光で黒っぽくなります。

Q.12絵具のチューブをみたら、使用顔料についての表示がしてありました。そこに示されている無機・有機・混成はどのような違いがあるのですか?

A 顔料は大きく分類して、無機顔料と有機顔料の二つに分かれます。これは化学物質が無機物と有機物に分類される、化学的慣習に基づいているものです。「混成」というのは、無機顔料と有機顔料の混合でできている絵具をさします。

無機顔料

有機顔料

耐光性

一般に優れている

一般にやや劣る

耐、酸・アルカリ性

劣るものがある

一般に優れている

耐、油・溶剤性

一般に優れている

劣るものがある

着色力・隠蔽力

隠蔽力に優れるものがある

一般に着色力が強く隠蔽力は弱め


耐 光 性 : 耐光性が低い顔料は強い光によって褪色・変色する。

耐、酸・アルカリ性 : 耐酸性の弱い顔料は酸性ガスなどの影響で変褪色し、耐アルカリ性の弱い顔料はフレスコ画に使えない。

耐、油・溶剤性 : これが弱い顔料でできている油性絵具を塗り重ねると、下色が滲み出してくる事がある

着 色 力 : 混色の際、一方の色を着色する力の強さ。

隠 蔽 力 : 塗り重ねの際、下色をおおい隠す力。絵具の透明性に関係がある。

※かつて有機顔料は無機顔料に比べ、劣るものとされてきたきらいがありますが、近年は耐光性や耐溶剤性に優れた高性能の有機顔料も開発されています。

Q.13  絵具のチューブに、耐光性とか、堅牢性という表示があります。どういう意味でしょうか。

A  絵具や塗料には、外部からのいろいろな刺激を受けた場合に、どれだけその影響を受けないで品質を保てるかという問題があります。それには、耐光性、耐候性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐酸性など、けっこうたくさんの項目があります。
 バインダー自体にも耐光性の強弱はありますが、やはり顔料の耐光性が重要視されます。耐光性は絵具メーカー各社それぞれ独自の表記の方法をとっています。クサカベでは5段階にわけて、星のマークの数で識別表示しています。星の数が多いほど、光で変色しなくなる、とお考えください。なお、水彩絵具の場合は、最高位の耐光性をもつものは、星五つではなく「高耐光性」の文字で表記しています。

  さて、色材には耐光性の他にもいろいろな「耐〜性」があります。これらをひとつひとつ表示するのはたいへんなので、ひとつにまとめ、その傾向をあらわしたのが「堅牢性」です。何に対して堅牢なのかそうでないのかまではわかりませんが、絵具としての信頼性をおおまかに評価する目安になります。

 これらの情報について、各絵具メーカーの発信のしかたはまちまちで、ほとんど表示していないメーカーもあります。統一されない情報は混乱しやすいのですが、規格がないのが現状です。
  これらの情報は、メーカーが持っている知見に基づいて、情報作成の時点で正確であると信じて提供されているものですが、その絶対性や信頼性を保証するものではありません。
  実験によっては情報とやや異なる堅牢性が示される場合もあります。 情報が有効な効果に結びつくためには、使用者も適正な使用方法や、作品の保存方法に気を遣う必要があります。

Q.14  絵具には、有害性あり、のマークが表示してあるものがあります。具体的には、どのくらい有害なのでしょうか。また、安全な扱い方を教えてください。

A  有害性とは健康への影響の程度で、その強さの尺度としては急性毒性の強さの程度を参考にするのが、一般的です。急性毒性の最も一般的な尺度はLD50=「半数致死量」で、それは、実験動物の半数を死にいたらしめる投与物質の量のことです。その単位はmg/kg(投与物質量/実験動物の体重)で表されます。そして、その数値が小さいほど毒性は強く、数値が大きいほど毒性は弱くなります。ヨーロッパのEU危険物指令は、物質の急性毒性の程度を次の三つで定義しています。

LD50≦25mg/kg : 非常に強い毒性がある物質
LD50 25〜200mg/kg : 毒性がある物質
LD50 200〜2000mg/kg : 有害性がある物質

 さて、絵具の急性毒性ですが、実は非常に低いのです。カドミウム顔料は一般に毒性のある顔料と考えられていて、絵具のチューブにも有害性があることを示すアイコンが表示されていますが、実際のLD50の値は5000mg/kg以上なのです。つまり、有害性がある物質とはいえません。絵具は有害性の低い物質なのです。これは、顔料は水に不溶の物質であり、体内に吸収されないため、と考えられます。


 では、なぜ有害の表示がしてあるかというと、万一の場合を考えての用心のためです。万一、絵具に欠陥があって吸収性の有害性物質が、健康に重大なダメージを与えた場合、メーカーには損害を賠償しなければならない責任があります。その事前対応策としての表示です。


 したがって、絵具の有害性については実際上、ほとんど無視できるレベルです。取り扱いについては、ごく普通の衛生的配慮、つまり、みだりに体内に摂取しない、作業が終わったら手の汚れを洗い流す、といった程度で充分です。それと、みだりに環境中に排出しないことをこころがければよいでしょう。使い終わった絵具のチューブや絵具カスは、燃えないゴミとして扱ってください。


 さて、油絵具は乾く過程で、ごく微量のガスを出します。この微量の揮発性物質が問題になる特殊なケースがあります。シックハウスの対象物質であるホルムアルデヒドが、ごく微量ですが発生します。いったんシックハウスになってしまった人にとっては、油絵具を描くことはもちろん、油絵を部屋にかけても、つらい症状をひきおこすことが考えられます。住空間が密閉型になり、環境のあちこちにいろいろな化学物質があふれる現代特有の問題です。


Q.15  飼っている犬が、絵具を食べちゃいました。すぐ病院につれていったほうがよいでしょうか。

A  心配はありません。絵具の急性毒性は低いですから、あわてなくてだいじょうぶです。消化されなかった顔料は、じきに体外に排泄されるでしょう。

慢性毒性が懸念される絵具として、油絵具のシルバーホワイトがありますが、これは長期にわたって摂取した場合に限ります。ヒトの場合、四週間にわたって、顔料としてのシルバーホワイトを毎日412mg、経口摂取した場合の死亡例がありますが、このような反復摂取は偶然ではおこりえません。

Q.16  絵具の全色塗見本を見ましたが、ほとんど同じ色に見えるものもあります。どうやって使い分けるのですか。

A: 見ただけではほとんど違いがわからず、実際に使ってみてはじめてその違いに気づく色もあります。何種類かあるブラックなどはその例です。

 絵具には「底色」というものがあります。これは、絵具をごく薄く塗ったとき、白と混合したときに明らかになります。生で塗った色が同じでも、白を加えたトーンが、がらりと違った印象になれば、「底色」が違うということになります。いわば、色の隠し味です。見本で同じ色に見えていても、「底色」はそれぞれ異なっています。


また、「着色力」「隠蔽力」も、見本ではわかりずらく、使ってはじめてわかる色の個性要素です。

Q.17  ライトレッドの着色力はなんであんなに強いのですか。

A  ライトレッドは、もともと非常に着色力の強い酸化鉄です。白でうすめると、上品なピンクになるのですが、その着色力の強さゆえ、使いこなしにくい色です。

こうした色に白を加えるとき、ふつうにパレットに色を出して、後から白を加えると、なかなか目的のトーンにならず、ついつい絵具を使いすぎてしまいます。逆に最初に白を必要量だけしぼり出し、後から色をちょっとずつ混ぜていくと、早く無駄なく目的の色が作れます。


Q.18  絵具には透明色と不透明色があるようですが、どうやって区別しているのですか。

A  機械的に計測した隠ぺい力の強さを参考にします。ただし、隠ぺい力の数値と、人間が感じる透明感は一致しないことがあります。フタロシアニングリーンなどは機械で計ると、隠蔽力が強いのですが、感覚的には、あきらかに透明感の強い色です。
 最終的には、人間の感覚を重要視するのです。



Q.19  混ぜたら「にごる色」と「にごらない色」を教えてください。色が汚くならないように混色する方法はありますか。

A  「にごる」というのは、彩度が低下するという意味とほぼ同じです。ただし、色彩的な不調和感とでもいう感覚的な要素を多分に含んだ彩度の低下です。混色をすると、たいていは彩度が下がります。補色の要素を含んだ混色では、特にそうです。こうした補色の組合せは、わざと彩度を落とした効果をねらって行われることが多く、いちがいに否定されるものではありません。

 また、白との混色も彩度を落とします。白と黒の混合が無彩灰色であるのに対して、白と有彩色との混合は有彩灰色となります。いき過ぎた白の多用は、明度こそあがりますが、画面全体を灰色の集合とし、メリハリを失うもととなります。しかし白との混色を全く否定することも意味がありません。


 混色自体は色をにごらせも汚くもしません。画面上の色の使い方がきれい汚いを決定します。


Q.20  肌色を作るには何色と何色をまぜたらよいですか。

A  ヨーロッパの古い文献には、シルバーホワイト+バーミリオン+黄土+焼黄土というような記述があります。現代では白+黄味の赤を基調に、イエローオーカー、ライトレッドあたりで変調させるということになります。

ただし、肌色をベタ一色で塗っても、お面をかぶったようになりますから、「調子」というものをよく表現しないといけません。つまり、「光」による肌色の変調です。

また、古典的技法では、肌色の下にテルベルトの下塗りがほどこされていることがあります。薄い肌色の塗りの下にうっすら透けて見えるテルベルトが、光学的なグレーとなって、リアルな効果をもたらします。現代ではテルベルトのかわりにオキサイドグリーンを使ってもよいでしょう。


Q.21 油絵具をしばらくぶりに使おうとしたらキャップが固まっていました。どうにかなりませんか。

A  以前は開きにくいキャップは、ライターの火などであぶればよい、といわれてきましたが、それはキャップが金属でできている場合に限ります。今は、プラスチック製のキャップが主流なので、火であぶると、キャップが溶けてしまいます。「プライヤー」というペンチに似た工具がありますから、これを使ってあけてください。チューブの肩の部分をしっくりつまんで、キャップをプライヤーではさんでゆっくり回してあけます。

 あかなくなった時の対処よりも、事前の対策のほうがたいせつです。絵具をしまうときには、チューブの口から絵具がはみださないように、ネジ口部分をきれいにしてから、しっかりとキャップをしめましょう。絵具は接着剤と同じようなものなのです。

Q.22  パレットや筆についた油絵具が固まってしまいました。もとどおりになりませんか。

A  これももとどおりにすることはできません。油絵具の硬化は一方通行です。絵具はあきらめなければいけません。道具のほうですが、リムーバーKのような剥離剤で、絵具自体ははがせます。しかしパレットの塗装もはがれ、このまま使うと、絵具の油分を必要以上に吸い取ってしまいます。リンシードオイルで拭きこむとパレットの機能は回復しますが、たいへん時間がかかります。筆も、絵具が固まった時点で傷んでしまっています。

 筆やパレットを気持ちよく使うには、描き疲れていても毎日の掃除と手入れを欠かさないということ以外にないのです。できれば、パレットに残った絵具はきれいに掻きとり、ブラッシクリーナーをふくませた布で拭きこんでおきたいものです。



Q.23  油絵具に使用期限はありますか。

A  食品のような一定の使用期限はありません。保管条件さえよければ、30年くらいは使えます。一方、条件が悪ければ早いうちに固まって使えなくなってしまいます。保管の条件とは絵具を空気から隔絶することです。開封後の品質は個人の責任において管理してください。

Q.24  画用液に種類がたくさんあるのはどうしてですか。また、使う順番はあるのですか。

A  実は油絵具というものは、不完全な作りをしていると言ってもよいくらいで、絵具だけではほとんど絵が描けず、限られた表現しかできません。自由に絵具をあつかうには画用液の助けが必要になってきます。

最初から絵具と画用液をいっしょにしておけば手間はかかりませんが、いろいろな人のいろいろな要求に応じることができません。画用液を絵具と別にしておき、何種類か作っておけば、それぞれの要求に応じられるというわけです。また、画用液には使用目的によって特別な用途をもつものがあります。加筆専用の画用液とか、仕上げの保護剤、固まった絵具の剥離剤、乾燥促進剤などです。

それらを全部使う必要はありませんし、使う順番によってたくさん作られているわけでもありません。それぞれの画用液の特長を理解して、自分の必要なものを選択して使えばよいわけです。


Q.25  リンシードオイルとポピーオイルの使い分けを教えてください。

A  リンシードもポピーも乾性油、つまり酸素と反応して乾く油で、油絵具を練り合わせるための糊剤=バインダーとして使われています。

画用液としては、これにテレピンのような揮発性溶剤を加えるなどして、絵具の溶き油にします。それぞれに特長があって、リンシードオイルは比較的乾燥が速く、黄変の程度はやや強いが、じょうぶな膜をつくります。ポピーオイルは乾燥が遅く、黄変の程度は少ないが、ややもろい膜になります。一長一短です。

絵具のバインダーとしては、白には黄変程度の少ないポピー、色物には塗膜のじょうぶなリンシードという使い分けをしますが、画用液としてはそこまでの使い分けをしなくてよいでしょう。黄変の程度をとるか、塗膜のじょうぶさをとるかで、どちらか一方を選べばよいと思います。

Q.26  ペトロールとテレピンの使い分けを教えてください。

A  ペトロール、テレピンは画用液として使う揮発性溶剤のなかまです。使い分けるというものではなく、どちらかを選べばよいので、ここではそれぞれの性状について説明します。
テレピンは絵画技法上、古くから使われてきた重要な溶剤で、松の樹脂を蒸留して得られます。成分はα−ピネンを主とする物質で、日本の絵具メーカーが発売しているテレピンは、ヨーロッパのものよりもα−ピネンの純度が高くなっています。

特有の香気があり、描画に適した蒸発性状を持ち、樹脂に対する適度な溶解力があります。未開封のものは長持ちしますが、容器の半分くらいまで使ったものや、密栓が不充分なものは、空気にふれて徐々に変質します。変質したものは蒸発しきらずにべたつきを残します。したがって、使い残しの古いテレピンは、べたつきがないことを確認してから使ってください。テレピンには弱い感作性があり、まれに皮膚のかぶれをおこす人がいます。テレピンをさらに精製したα−ピネンも売られていますが、テレピンとの性状の差はあまりありません。


ペトロールは石油を蒸留して得られる揮発性溶剤です。石油蒸留物にはたくさんの種類があり、そのなかから、テレピンによく似た蒸発性状や溶解力をもつものが絵画用のペトロールとして使われます。蒸留は絵具メーカーではなく、大手の石油メーカーによっておこなわれます。

ペトロールは単一の物質ではなく、大きく三つのグループにわかれていて、これらの蒸留物の成分バランスは、絵具メーカーによって若干異なります。したがって各メーカーのペトロールでは、微妙な性状の違いがあります。成分のうち、溶解力に関ってくるものが多ければ溶解力も強くなります。

無臭のペトロールや無臭クリーナーは、特に溶解力が強い物質を含んでいないため、溶解力、洗浄力は弱くなります。ペトロールはテレピンのように空気によって変質しないと言われますが、まったく変質しないわけではありません。長期にわたって空気にふれると、やはり変質する場合があります。刺すようなにおいに変わったり、変色したペトロールは使ってはいけません。


テレピンもペトロールも揮発性溶剤ですから、絵具を固着させるはたらきはありません。乾性油やワニスの希釈剤として使うものです。揮発性溶剤の多用は、絵具の接着力を弱めます。揮発性溶剤は絵具の流動性をたかめてくれますが、最初から最後までテレピンだけで描くといったやりかたをしてはいけません。


Q.27  乾性油と揮発性油を混ぜてオリジナルの画用液をつくりたいと思います。その割合はどのくらいにしたらよいでしょう。

A  溶き油は、乾性油だけで描いても揮発性溶剤だけで描いても都合がよくありません。乾性油と揮発性溶剤のブレンドは、もっともシンプルなかたちの溶き油です。

乾性油の濃度ですが、最大で40%くらいが適当です。つまり、乾性油が4に揮発性溶剤が6の割合になります。これを越えない範囲で、調整してください。描画の際には、その濃度のものを最初から最後まで使ってしまうと濃すぎます。描き出しから中描きにかけては、さらに揮発性溶剤でうすめたものをお使いください。

Q.28  油つぼに画用液をいれて保管していたら、固まったのはなぜですか。

A  油つぼというのは、いっとき画用液をいれておくだけの道具で、保存容器ではありません。密閉性もあまりよくありませんし、多くの空気と共に画用液を入れておくことになります。プラスチック製の油つぼでは、プラスチック自体が酸素を透過させます。油つぼに画用液をいれておくと、しだいに空気で固まってしまうのは当然のことです。固まってしまうだけではなくて、つぼがブリキ製や銅製だと、後から絵具の変色を招く原因になることもあります。

めんどうでも使い終わったら、そのつど、油つぼの残り油はきれいにふき取っておきましょう。

Q.29  テレピンのにおいがきつすぎてダメなのでが、においのすくないものはありますか。

A  テレピンのにおいを取り去ることはできません。ペトロールのほうをためしてください。ペトロールの石油臭もダメならば、無臭のペトロールが市販されていますので、これを使ってみてください。ただし、無臭のペトロールは樹脂に対する溶解力が弱いので、ペインティングオイルの種類によってはこれを混ぜるとにごったり分離したりする場合があります。

ラベンダーオイルという揮発性溶剤もありますが、これもかなり強いにおいがあります。

Q.30  油絵具をかいていると、画用液で手が荒れるのですが、何かいい対処法はありますか。

A  手が荒れるのは、画用液に含まれる溶剤によって皮膚の油気が抜けるためです。ひどくなると、「脱脂性皮膚炎」というものをおこす場合もあります。原因は画用液が皮膚に接触するためですから、できるだけ画用液が手につかないようにすることです。服に画用液をこぼしてそのままにしておいても、脱脂はおこります。ただちに着替えるべきです。


Q.31  油絵具の筆洗液の成分を教えてください。

A ブラッシクリーナーはペトロールと同じく、石油の蒸留物で、やはり複数の物質からなります。組成的にはペトロールに似ていますが、洗浄に適するように、ペトロールより芳香族成分が多いものが選択されることがあります。洗浄力を強化したタイプのブラッシクリーナーデラックスというクサカベ製品では、さらに芳香族成分の多いものが使われます。
筆のリンス効果をうたったものは、筆毛を柔軟に保つ効果のある界面活性剤と乳化剤が配合されています。このタイプは、水を加えると白く乳化してしまうので、そのままで使います。

Q.32  油絵具の筆洗液の代用として灯油は使えないでしょうか。

A  使えないことはありません。ただし、洗浄力が弱いので、なかば固まりかけた筆を洗う場合などは不適当です。また、灯油は蒸留範囲がひろいので、非常に蒸発の遅い成分を含んでいます。洗った筆をよくふきとらないと、蒸発の遅い成分を絵具にとりこむことになります。

灯油には硫黄分が多くふくまれていて、それが筆をいためる原因になったり、絵具の変色を招くおそれがある、といわれるときもありますが、戦前戦後ならともかく、現在の灯油は脱硫度が高いのでその心配はありません。

Q.33  描き終わった後、筆をブラッシクリーナーに入れっぱなしで放置してだいじょうぶですか。

A  筆にクセがついてしまいます。さらに長時間放置すると、筆毛の根元に残った絵具カスがかたまってしまいます。一日の仕事が終わったら、石鹸とお湯で筆をよく洗い、形をととのえて立てておきましょう。

Q.34  ブラッシクリーナーに水をいれて使用したほうがよいのですか。

A  ブラッシクリーナーに水をいれると、水と油の二層に分離して、絵具の汚れが水の層に分離沈殿するため、上層のクリーナー部分は汚されずに長く使えるということで、またクリーナーの節約のため、しばしばそうした使い方をされます。しかし、絵具の油分は上層にとけこんでいるため、クリーナーの洗浄力劣化に気がつきにくくなります。筆洗器が鉄製だと、水をいれることで、サビが発生します。水の併用はおすすめできません。

Q.35  汚れにくいブラッシクリーナーはつくれませんか。

A: 筆を洗うということは、筆についた絵具汚れをクリーナー液に移行させて、筆をきれいにすることにほかなりません。クリーナー液が汚れないということは、筆の汚れが落ちていないということですから、そのようなブラッシクリーナーは残念ながらつくれません。クリーナー液をなるべく汚さないためには、筆についた絵具汚れをボロきれでぬぐい取ってから洗うようにしてください。

Q.36  ブラッシクリーナーの容器にはいっている白い玉はなんのためのものですか。

A  容器が筆洗器をかねた小型のクリーナーには、白い玉がはいったものがあります。液が汚れて、この玉が見えなくなったらそろそろ液を交換してください、というシグナルのようなものです。

Q.37  使い終わったブラッシクリーナーは、どうやったら処理できるのですか。

A  市販の油処理材があります。固めるものと吸わせるものがありますが、画材店で入手できます。吸わせるタイプのほうは、スーパーで売っている食用油を処理するものでも使えます。油を加熱してから固めるものは危険ですから、かならず常温で処理できるものを使ってください。なお、リンスいりのクリーナーは、固めるタイプが効きません。吸わせたり固めたりして処理したものは可燃ゴミとして回収に出します。

廃クリーナーは、できれば顔料と廃油にわけることが望ましいでしょう。廃クリーナーを静置しておくと、下に顔料の部分が沈みますから、うわずみの廃油部分を別容器に出してから処理し、残ったヘドロ状の顔料をビンなどにすくいとって不燃ゴミにします。ろ紙でこし分けてもよいでしょう。

学校で発生する廃油は、引火性の産業廃棄物として、有償処理の対象になります。

Q.38  溶き油が白くにごってきました。使わないほうがよいでしょうか。

A  鉛系の乾燥剤を使ったペインティングオイルでは、時間がたつと乾燥剤の鉛が不溶性のものになって析出沈殿してくることがあります。この場合は多少乾燥時間が長くなるだけで、使用にさしつかえありません。

ビンの中の空気にふれて、油が自動酸化して粘度の上昇をともなってにごってくる場合は、固着力の低下を招き使えません。

ダンマル樹脂をつかったペインティングオイルでは、にごり消しに入れてあるアルコールが蒸発するとにごってきます。この場合、少し濃度が高くなりますが使えます。

リンシードオイルのような乾性油は、厳冬期に白くにごることがありますが、あたたかい場所においておくともとにもどります。

Q.39  金属製の缶にはいったテレピンをしばらくぶりに使おうと思ったらサビのような色がついていました。湿気のせいでしょうか。

A  テレピンは空気に触れると酸化しますが、酸化の過程で「過酸化物」というものができます。この過酸化物によって缶の鉄が腐食され、赤サビがでたのです。乾性油も酸化の過程で過酸化物を出しますから、おなじようにサビができます。画用液は使いかけの状態で金属容器に長く保存してはいけません。

Q.40  油彩画の仕上げニスはかけなければいけないのですか。

A たいていの絵は描きあがったらそれでおしまいになるようですが、仕上げのニスはかけたほうが絵のためになります。

ニスをかける目的は、画面の光沢の調整と画面の保護の二つです。描きあがった油彩画面にはたいてい光沢の部分ムラがあるものです。そこにニスをかけると、画面の光沢が統一されます。たいていの仕上げニスは艶だしですが、艶消し効果のものもあります。

画面はつねに大気中の汚れや画面に有害なガスの影響にさらされています。仕上げニスはその対策になります。大気中の汚れはニスの表面に吸着され、絵画そのものは汚されません。ニス表面が汚れてきたら、ニスの層を溶剤で除去すれば、もとの画面が復活します。また、ニスの層により、硫化水素や二酸化硫黄のようなガスから画面を隔絶することによって、画面の変色劣化をふせげます。

仕上げニスには天然樹脂のものと合成樹脂を使ったものが何種類かありますが、「タブロー」と呼ばれているダンマル樹脂のものがよく知られています。仕上げニスは絵具の乾燥がすすんでからでないとかけてはいけません。乾ききっていないうちにニスをかけると、絵具の乾燥を阻害します。描きあがってから六ヶ月は待たないといけません。クサカベの「タブロースペシャル」という製品は、ガスの通り道がある塗膜をつくるニスなので、長期間待たなくても絵具の指触乾燥の段階で塗ることができます。ただし、ガス透過性の塗膜なので有害ガスからの保護作用はありません。展覧会がせまっている作品のニスがけには重宝します。

Q.41  ニス(画面保護材)によって6カ月以上、絵具を乾かしてから塗らなくてはいけませんが、指触乾燥程度でそのニスを塗るとどうなりますか。

A  仕上用のニスの多くは、高濃度の樹脂溶液です。これは溶剤の蒸発と共に乾燥してしまい、その塗膜も硬いものですから、絵具の層がゆっくり乾燥し、その体積が変化していくと既に乾いたニスの層がその変化に対応できず、ヒビが入ったりします。従って、殆どの仕上用ニスは絵具の層が一定の体積変化を終える期間中は、塗らないようにして下さい。

Q.42  作品を展示する直前の指触乾燥程度の作品には、どのニスを塗れば光沢がきれいに出ますか。

A  作品を制作していく時に、光沢が引けてしまうことがあります。このような作品を急いで出品しなければならない時は、指触乾燥していればエアゾールタイプの「タブロースペシャル」が効果的です。光沢調整と画面保護の両方の効果を発揮します。しかし、一時的なもので半年ほど経って絵具がある程度内部まで乾燥したら、表面を柔らかい布などにテレピンをしみ込ませて軽く拭いてから、「タブロー」を塗布して下さい。

Q.43  エアゾールになった「ルツーセ」を使っているのですが、途中から噴射できなくなりました。不良品でしょうか。

A  ルツーセに含まれる樹脂分が噴射ノズルにつまったもので、不良ではありません。製品のラベルにも書いてありますが、噴射しおわったらエアゾールをさかさにしてガスをから吹きさせるとノズルに残った液がふきとばされるのでつまることはありません。

殺虫剤や芳香剤のスプレーには、固まる成分が含まれていないのでその必要はありませんが、画用液のエアゾールにはたいてい樹脂が含まれています。「さかさから吹き」はかならず実行してください。不注意でつまらせたノズルは、溶剤で洗ったり細い針先でつつくと開通することがあります。ただしノズルの穴をひろげてしまうと噴射状態が悪くなります。

Q.44  画用液には有害性や危険性をしらせるアイコンが表示されているものがあります。どのくらい有害危険なのでしょうか。また正しい取り扱いかたを教えてください。

A  有害性は健康にたいする影響の程度ですが、危険性は防火上の危険度のことになります。

絵具の場合は、直接的な毒性も低く、体内に侵入する確率も低いので、それほど心配しなくてよいのですが、画用液の場合は揮発性の有機溶剤がかかわってくるので、蒸気を吸入することによる体内侵入があります。ベンゼンやトルエン、塗料用シンナーほど悪性ではありませんが、画用液にふくまれる溶剤も有機溶剤ですから、濃厚な蒸気を長時間吸っているとめまいや頭痛をおこすことも考えられます。

通常の使い方であればまず心配はないのですが、たまに新鮮な空気を吸ってリフレッシュすれば気分よく描きつづけられるというものです。画用液を幼児などが誤飲した場合の対処ですが、のどに指をさしこんだりして無理に吐かせてはいけません。吐いた溶剤が気管に逆流して、なおりにくい化学性肺炎というものをひきおこすおそれがあります。誤飲したら口をすすぐ程度にしてあわてずに医師にみせましょう。画用液で毒性の注意をするとしたら、ストリッパーでしょう。ほかの画用液よりも毒性が格段に高いので、より安全な剥離剤であるリムーバーKへの乗り換えをおすすめします。

危険性のほうですが、画用液は消防法による第四類に相当します。つまり引火性液体です。その危険度は引火点によって決まるといってよいでしょう。引火点が低いほど常温で引火する危険度がましてきます。画用液の場合、比較的引火点が高く、灯油を扱うのとおなじくらいの配慮をすればよいでしょう。画用液で比較的引火点の低いのは、アルコールベースのフキサチーフ類と可燃性ガスをつかったエアゾール類です。

乾性油には特殊な条件で自然発火する可能性があります。乾性油が酸素と反応するとき、わずかですが反応熱をだします。通常は熱が自然に放散されて問題にはならないのですが、絵具をふきとったボロきれをぎゅうぎゅうにゴミ箱につめこんだ場合には危険性がでてきます。ボロきれについた油は空気と触れる表面積が大きいので熱の発生が早く、つめこんだことで熱が放散されずにこもってしまい、温度が上昇していきます。暑い夏に教室のゴミ箱で発火した例もありますから、ボロをすてるときは、つめこみすぎない配慮が必要です。ポリ袋に水といっしょに捨てれば、まず安心です。

Q.45  画用液の使用期限はありますか。

A  使用期限は定めていませんが、品質を維持できる期間は、開封前と開封後ではかなりのちがいがあります。これは画用液のほとんどが酸素と反応するか蒸発性があることによります。新品のときは容器内の空気はわずかですが、使うにしたがって空気のしめる容積は大きくなってきます。

テレピンのように酸化により劣化する性質のある画用液や、速乾性のペインティングオイルのように空気の影響をうけやすい画用液は、使うにしたがって製品の劣化スピードは早くなります。画用液を買うときは、自分の使う量を考えて、必要以上に大きなサイズのものはさけるべきです。また、容器の密閉性を確保するために、中栓キャップを紛失しないようにするといった配慮は必要です。

画用液もまた、開封後の品質はご自身で管理してください。






※株式会社クサカベさまから引用※

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